子宮ちくのう症は、1歳でもなる場合はありますが、通常は5歳から6歳以上になると発症する病気です。発情後2~3ヶ月で起こりやすく、老犬では頻繁にみられます。
この病気は高齢犬に多く、女性ホルモンの分泌バランスに狂いが生じたために発症するといわれており、出産経験が少ないとよく発症するようです。
病気のはじめは無症状。悪化するにつれて、食欲が減退し、元気もなくなってきます。嘔吐するようになり、陰部から膿がでてくる場合もあります。
高齢の雌で、食欲と元気がなく水ばかり飲んでいて、陰部から出血があればこの病気を疑ってみましょう。子宮ちくのう症には、「開放型」と「閉鎖型」と呼ばれる状態があります。
開放型というのは、子宮内に蓄積された膿が、部分的に陰部から漏出している状態のこと。
閉鎖型とは、お腹の中にまるでソーセージのように膿のたまった子宮が存在し、その一部ですら全く外部に出てきていない状態のことです。
閉鎖型の方が深刻で、多量の膿がたまった場合は腹部が膨らむことがあり、子宮が破れて腹腔に細菌が漏れ出た場合は腹膜炎を起こし短時間で死に至ります。
早期に発見し、手術を受ければ生存率はほぼ100%といっていいでしょう。手術で膿の溜まった子宮と卵巣を取り出して抗生物質で腹腔内を洗浄します。
しかし症状が出てからだと手術が1日遅れるだけでかなり悪化します。食欲不振程度しか症状に現れないこともあり、手術に踏み切れずにいるとそれが命取りになったりもします。
手術をしない場合は、最終的に死亡する可能性はほぼ100%。抗生物質と子宮頚管を開く注射で膿を外に排出する方法がありますが、その効果は延命処置に留まります。
細菌が腹腔内に漏れて腹膜炎を起こしてしまった場合は深刻で、手術を受けても助からないケースがあります。
子宮ちくのう症予防には、避妊手術が最適。ただし、卵巣のみ摘出した場合は発症する可能性もあるので油断は禁物です。
関連記事
犬の子宮蓄膿症~早期発見のために検診を受けよう
犬の子宮がんは、人間に比べればかなり少ないといわれています。しかし、老犬になってきたら病気のリスクは高まるもの。定期的に検診を受けて、早期発見を心がけましょう。
犬の子宮に関連する病気としてよく知られているのは、子宮がんではなく「子宮蓄膿症」の方。
犬の子宮蓄膿症とは、子宮の内部に膿がたまる病気で、発情後2~3ヶ月で起こりやすく、老犬では頻繁にみられる病気です。秋には特にこの病気にかかる犬が増えるといわれています。
発情期の黄体期にサルモネラ菌、ブドウ球菌、大腸菌などの細菌が子宮内に侵入して、増殖することで子宮蓄膿症が発症します。特に、しばらく生理がなく、ひさしぶりにきた後は注意が必要でしょう。
子宮蓄膿症の診断は、レントゲンやエコー、血液検査で行われます。発症している場合は、白血球の増加が見られ、多いときは10万近い数値になることもあります。
白血球が増加する病気は子宮蓄膿症と白血病くらいしかないため、多い場合は診断が比較的簡単ですが、症状が末期の場合は逆に白血球は少なくなるので血液検査だけでの診断は難しくなるでしょう。
症状の出始めは、ほぼ無症状だといわれています。病態が進行してくると、食欲がなくなり、嘔吐をするようになり、陰部から膿が出てくることがあります。
膿が出ないこともありますが、出ない場合は膿がたまることでお腹がふくらんでしまい、より深刻だといえるでしょう。
太ったかな、と思って検診に行ったところ、子宮蓄膿症が発覚することも少なくはありません。多くの場合、多飲多尿がみられるのがこの病気の特徴です。
もしも子宮が破れた場合、最悪の場合腹腔に細菌が漏れ出て、腹膜炎を起こしすぐに命を落とすことが考えられます。子宮蓄膿症を予防するための一番の方法は、避妊手術を受けること。
避妊手術を受けていれば予防可能ですが、卵巣のみ摘出した場合は発症する可能性があります。悪化させないためのも、早期発見と早期治療が何よりも大事です。
子宮蓄膿症は、手術をすれば治る病気ではありますが、手術費も決して安いわけではありませんし、診断が遅かった場合には命を落としてしまうこともよくあるといいます。
早期発見のためにも、日頃からチェックしておくようにしましょう。
関連記事
9歳時雄犬の発生率95%「前立腺肥大」
年齢とともに前立腺の細胞が徐々に増え、肥大してしまった状態のことを「前立腺肥大」といいます。前立腺とはオスのみにある生殖器で、膀胱の真下に尿道を取り囲む形で存在します。
主に、前立腺液を分泌し、精嚢から分泌された精嚢液を精巣でつくられた精子と混合して精液をつくることや、射精時における収縮や尿の排泄をサポートする働きがあります。
前立腺肥大は、人間と犬にだけ発生する病気で、主に老犬に見られ、去勢した場合でも9歳時における発生率はなんと95%だといわれています。
前立腺肥大は、精巣から分泌される雄性ホルモンと雌性ホルモンの量がアンバランスになることにより起こります。これは良性の過形成のもので、その他腫瘍性によるもの、細菌性によるものがあります。
正確なメカニズムはわかってしませんし、前立腺肥大にかかる雄犬とかからない雄犬との違いに関してもいまだ解明されていません。
前立腺肥大が起こると、初期段階では無症状のことがほとんどですが、骨盤膣内で徐々に前立腺が肥大していくことで周囲にある臓器を圧迫し、様々な症状を起こすようになります。
何度もトイレに行くものの、尿道が狭くなるためおしっこは少量ずつしか出ず、前立腺組織内部に嚢胞が形成されると、尿とは関係なく尿道から血のような分泌物が出るようになります。
排便も困難になり、便が出ないのにきばっているような「しぶり」に陥ります。
レントゲンやエコー検査などにより前立腺肥大と診断された場合は、まずは去勢手術を行いホルモンによる刺激を絶ってからホルモン投与などによる治療を始めます。
前立腺が肥大して腸を圧迫し、便秘状態に陥っているだけなら食事療法で改善することもあります。
前立腺肥大は年齢やホルモンの関係により引き起こされることがほとんどなので、去勢手術をすることにより予防は見込めます。
去勢をしていない場合は前立腺肥大を起こす可能性が高いので、日頃から排尿時の様子を観察しているようにしましょう。
関連記事