ウィルスが原因となって肺炎になることを、犬のウィルス性肺炎といいます。一般的な初期症状は、食欲不振、元気消失、発熱、脱水などから始まり、呼吸もゼーゼーと音をたてて苦しそうにするようになり、口を開けて一生懸命呼吸するといった症状がみられます。
浅く早い呼吸になることもあり、吐き気を伴い、症状が悪化して重篤になると呼吸困難に陥り失神することもあります。
運動や散歩をするのを嫌がり、呼吸がしにくいため体を横にして寝ることすらできなくなってしまいます。
気管支炎に似た症状が認められることが多いのが特徴ですが、ウィルス性肺炎の方が気管支炎などよりも症状は重いといわれています。
免疫力の低い子犬だけでなく、他の病気などももっている老犬などがウィルス性肺炎にかかった場合は命に関わります。
犬のウィルス性肺炎を引き起こす原因となっているウィルスとしては、ケンネルコフのパラサイトインフルエンザウィルス、アデノウィルスがあげられ、最も多いのが犬ジステンパーウィルスです。
ただしウィルス単独による一次性の肺炎が認められることは少なく、多くの場合は真菌などが気管や気管支に入ったことで気管支が感染症を起こし、炎症が進んでしまった場合に肺炎が認められています。
また、ハウスダストや化学物などアレルゲンを吸いこんだことにより発症することもあります。犬のウィルス性肺炎の治療は、抗生物質で肺の炎症を和らげる方法や、薬剤を蒸気で吸わせる酸素吸引などを行って、呼吸困難を落ち着かせるのが一般的です。
症状によっては入院することもありますが、自宅で療養する場合は、必ず空気のキレイな場所で安静に過ごすようにしましょう。
回復をしてからも、1ヶ月程度は安静を保ってあげるようにしましょう。飼い主がしっかりと様子を観察し、獣医と相談しながら見守ることが何よりも大切です。
ウィルスはワクチンによって予防することができるので、早めに接種し、1年に1回は接種するよう心がけましょう。
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目次
犬のウィルス性胃腸炎とは?
犬のウィルス性胃腸炎とも呼ばれているのが、「コロナウィルス性腸炎」です。犬のコロナウィルス性腸炎とは、犬コロナウィルスによって引き起こされる感染症です。
このウィルスに感染すると、犬の元気がなくなり、食欲不振になり、下痢、嘔吐などの症状が現れます。
このときみられる下痢は、水溶性や軟便まで差がみられますが、時々血が混じっていることもあります。犬コロナウィルス自体の病原性は弱いため、成犬に感染してもほとんど症状が出ることはありません。
しかし、子犬がコロナウィルスに感染し、さらにパルボウィルスと合併することにより最悪の場合死に至ることもあります。
犬コロナウィルスは、感染した犬の糞や尿を何らかの拍子で口にしてしまうことで感染します。また、ストレスによる免疫力の低下があると、成犬でも症状を示すことがあります。
犬コロナウィルスを治療するための薬はありませんので、感染した場合は対症療法となります。輸液によって失われた体液を補うなど、疾患の原因を取り除くのではなく、症状の軽減を目的とした治療が施されます。
1日ほどの対症療法で、多くは早期に回復しますが、それでも下痢や嘔吐が続く場合は、他のウィルスに感染している可能性があり、さらに積極的な治療が必要となります。
また、抗生物質などで二次感染を防ぐのも重要です。ウィルスや細菌が感染することによって他のウィルスを防ぎきれなくなることを二次感染といいますが、子犬は特に二次感染にかかると死亡率が上がりますので注意が必要です。
犬コロナウィルスには、有効なワクチンが開発されていますから、予防をするためにも子犬のうちからワクチン接種をおすすめします。
通常、成犬の場合は感染しても症状は現れませんが、感染に気づかずウィルスをまきちらしてしまうことがあります。
子犬に感染する危険性があるので、成犬もワクチン接種をするようにしましょう。予防のためにも、飼育環境を清潔に保つことが大切です。
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犬のウィルス性肝炎「犬伝染性肝炎」とは?
犬のウィルス性肝炎として、「犬伝染性肝炎」というものがあります。犬伝染性肝炎とは、アデノウィルス科に属する犬アデノウィルスⅠ型によって引き起こされる感染症です。
感染し発病した犬や、体内にウィルスが潜んでいる状態の犬の、唾液や尿や使用した食器などに接触することによって経口感染します。
アデノウィルスⅠ型は伝染力が大変強く、回復した犬でも数ヶ月間は尿の中にウィルスが存在するといいますから、他の犬と接触しないように飼育環境を工夫しましょう。この感染症の症状は、大きくわけて4通り。
数時間前まで元気に過ごしていた子犬が急に腹痛を起こして、24時間以内に死亡するケースです。
ウィルスが感染しているにも関わらず、何の症状も示さないケースのことをいいます。
感染し症状が現れているものの、食欲不振、鼻水、発熱など軽度な症状を発症する場合のことをいいます。
2~8日の潜伏期間の後に、元気が失せ、40度以上の発熱をし、食欲がなくなり、下痢や嘔吐を繰り返し、水を大量に飲むといった症状が現れます。腹痛を伴い、胸と腹の中間あたりを手で軽く押すと痛がるのが特徴です。
このような状態は4~6日ほど続きますが、その後急速に回復に向かいます。この回復期に目が青白くにごることを「肝炎性ブルーアイ」といい、通常は3週間ほどで回復します。
犬伝染性肝炎の治療は、疾患の原因を取り除く治療法がないため、症状の軽減を目的とした対症療法が行われます。また、抗生物質などの薬を使って二次感染を防ぎます。
体がウィルスに侵されているときは免疫力が低下しているため、他のウィルスも侵入しやすい状態になっています。そうなると死に至るリスクも高くなってしまうので、早めの対策が必要です。
ウィルスに有効な薬はありませんが、予防をするためのワクチンは開発されています。ワクチン接種が最も有効な予防法ですから、子犬のうちから接種することを心がけましょう。
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犬伝染症肝炎を起こす「アデノウィルスⅠ型」
アデノウィルスⅠ型というウィルスに感染すると、アデノウィルス感染症(犬伝染症肝炎)に陥ります。特に1歳未満の幼歳期に発症し、突然死の原因となる恐ろしい病気として知られています。
アデノウィルスⅠ型は、犬同士がなめ合ったりすることで感染します。経口感染でリンパ系まで行き、血液にウィルスが侵入したのち、肝臓、腎臓、眼などに集中的に感染。
症状は「劇症型」「重症型」「軽症型」「無症状型」の4通りに分かれます。
子犬に多い症状で、急に激しい腹痛を起こして高熱が発生し、吐血や血便を伴うことがあります。致死率が90%以上と非常に高く、多くの場合12~24時間以内に死亡します。
だんだんと元気がなくなり、鼻水、涙が出るようになり、40度以上の高熱が4~6日間ほど続きます。その後食欲不振に陥り、喉が渇くようになり、扁桃が腫れ、口の粘膜が充血、体やまぶたにむくみが見られます。
触ると腹痛のため、嫌がるのも特徴です。この状態が4~7日ほど続いてから回復に向かいます。
回復に向かいはじめると、目の角膜に青白い濁りが見られることがあり、これを「ブルーアイ」といいます。元に戻すまでには長い時間を要します
微熱、下痢、軽い腹痛、嘔吐などが症状として現れます。
何の症状も現れないので大抵の場合気づくことはないでしょう。
アデノウィルスⅠ型に感染しても特定の治療方法はなく、肝臓の機能を回復するような治療方法が適用されます。なるべく早く点滴や抗生剤を投与して治療を行う必要があります。
感染しないためにも、まずは正確にワクチン接種をすることが重要。7種混同ワクチンの中に組み込まれているアデノウィルスⅡ型ワクチンで予防が可能です。
アデノウィルスには「Ⅰ型」と「Ⅱ型」があり、Ⅱ型は主に重度の風邪のような症状を伴う「ケンネルコフ」の原因とされています。ウィルスとしてこの2種類は非常に近い関係にあるといえるでしょう。
風邪の症状が見られる「犬アデノウィルスⅡ型」
犬のアデノウィルス感染症には、肝炎を起こす犬アデノウィルスⅠ型感染と、風邪の症状が見られる犬アデノウィルスⅡ型感染があります。
犬アデノウィルスⅡ型は別名「犬伝染性喉頭気管炎」とも呼ばれ、主な症状は「犬パラインフルエンザウィルス」と同様。
発熱し、食欲不振がみられ、くしゃみ、鼻水、乾いた咳、扁桃腺の腫れなどがみられます。
アデノウィルス単体での感染なら比較的軽い症状で済みますが、他のウィルスと混合した場合に重篤な症状となり、肺炎を悪化させると死に至る場合もあります。子犬の場合は致死率が高いため、ワクチン接種がきわめて重要です。
ワクチンを接種せず、子犬など免疫力の低い犬が上記のような症状をみせた場合には動物病院で診察を受けるようにしましょう。
アデノウィルスⅠ型に感染していた場合は、ウィルスを殺すための確実な治療法がないため、対症療法でのみ行われます。
感染経路は、感染した犬の排泄物や分泌物からが主。他の犬への感染を防ぐためにも、症状が出たらすぐに感染した犬を隔離します。その犬の排泄物もすぐに処理し、体や排泄物に触った場合は必ずよく手を洗ってください。
排泄は必ず屋内でさせるようにし、触れずに片付けられるペットシートや新聞紙などの上にのせてすぐに処分しましょう。
公園や道端での排泄は厳禁。外の土にウィルスが入ってしまった場合には、確実に取り除くためには土を総入れ替えするしかありません。
他の犬に感染する前にワクチンを接種することが大切ですが、ワクチンの効果が現れるまでは約2週間かかります。
しかし回復した後も半年以上尿中にウィルスが潜んでいるといわれていますから、もう遅いからとワクチン接種をしないのではなく、早めに接種するようにしてください。
確実にウィルスを取り除くことは不可能ですが、感染した犬の生活環境は徹底的に消毒しましょう。消毒液は塩素系衣類用の漂白剤が適切。
漂白剤と水を2:5で混ぜ、スプレー容器などに入れてすぐに使えるよう犬舎にかけておくと便利です。
犬のウィルス性脳炎の症状と対策
子犬にてんかんの症状が出ると、突発性てんかんが疑われますが、意外にも犬の脳炎が身近に潜んでいることをご存じでしょうか。
突発性てんかんを起こしにくい犬種にそのような症状がみられたときには、脳の腫瘍か、もしくは脳炎が疑われます。
犬の場合、非感染症の脳炎が97%と大半を占めますが、残りの3%は犬ジステンパーウィルス性脳炎という感染症になります。
犬ジステンパーウィルスに感染しても、ワクチンを接種し、比較的体力のある犬はほぼ無症状か軽い風邪のような症状で済みます。
しかし、ワクチンを接種していない犬や子犬、老犬は重い症状がみられるので注意が必要です。
感染初期には、鼻水、発熱、食欲減退などの症状が現れ、続いて咳、くしゃみといった呼吸器症状と、嘔吐や下痢などの消化器症状がみられます。
これらは細菌の二次感染によってさらに悪化し、重度な肺炎を引き起こすことがあります。
免疫機能が十分に働いていない場合、ウィルスは神経系にまで侵入し、脳神経細胞が委縮したり、空洞化を起こしたり、様々な脳神経症状をあらわしていくことになります。
脈絡網膜炎や網膜剥離、視神経炎による失明や化膿性皮膚炎、鼻やパッドの角化が進んで硬くなるといった症状が見られることもあり、症状が急激に進行した場合には命に関わります。
犬ジステンパーウィルス性脳炎は、予防ワクチンを接種していれば感染を防げる可能性は高いといわれています。
しかし、接種済みの犬にも発症することがあり、このような犬の抗体価を調べたところ、ワクチン接種後も何らかの要因で抗体価が上がらず、低いままでウィルスに感染したと考えられます。
とはいえ、予防するためにはワクチン接種は欠かせませんので、早めの接種を心がけましょう。
また、てんかんのような症状が出た場合は、ウィルス性の脳炎だけでなく「パグ脳炎」とも呼ばれる「壊死性髄膜脳炎」や、「肉芽腫性髄膜脳炎」など、他の病気も考えられるのですぐに動物病院で受診するようにしましょう。
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