犬の細菌感染症とは、犬の呼吸器や泌尿器など、体内に細菌が入り込むことで起こる感染症のことをいいます。細菌は「バクテリア」とも呼ばれる単細胞生物で、あらゆる環境の中で生息しています。
ウィルスは他の生物の細胞を利用して繁殖しますが、細菌は自ら細胞を持ち、増殖するといった違いがあります。
また、細菌の種類もさまざまで、乳酸菌など、消化を活性化してくれるなど体の機能をサポートしてくれるような細菌もありますが、大腸菌やブドウ球菌などは、体内で増殖すると下痢や体調不良などを引き起こします。
このように、犬の細菌感染症といってもその種類や原因はさまざま。どのような細菌が原因でどのような症状が起こるのでしょうか?犬や猫にみられる細菌感染症として、以下のようなものがあります。
膀胱炎になる原因はいろいろと報告されていますが、犬の場合は大腸菌やブドウ球菌などの細菌が原因であることがほとんどです。
細菌性膀胱炎になると、尿ににごりがみられ、臭いがきつくなり、血尿などを出すこともあります。慢性化すると炎症が広がって腎盂腎炎を引き起こすこともあります。
細菌やウィルスに感染した犬が、二次感染によってかかることが多い細菌性肺炎。激しい咳を伴い、呼吸困難に陥ることもあります。
去勢していない高齢の雄犬に多くみられる病気で、尿の回数が増えるなどといった症状があります。
外耳に炎症が起こり、そこに細菌が感染して慢性化した状態。耳をかゆがったり痛がったりし、頭を振る、耳をこすりつけるといった症状がみられます。
細菌が原因で起こる皮膚病。初期症状では赤い小さな発疹や、脱毛などがみられます。アレルギーなどの病気から二次的に発症するケースが多いようです。
レプトスピラ菌の感染により引き起こされる感染症。食欲不振、嘔吐、高熱などの症状が見られますが、無症状で治癒するケースもあります。
マダニが媒介する病気。ボレリア菌の感染が原因で起こり、発熱や関節炎などの症状がみられます。
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目次
犬がかかる細菌性の病気
衛生管理に気を配ることで大幅に避けられる細菌系の病気ですが犬がかかる細菌系の病気もいくつかあり主要なのが「サルモネラ菌」と「レプトスピラ」、「ボルデテラ」です。
細菌は空気中、土や水などありとあらゆる場所に存在しています。目に見えない細菌が相手なので対策は難しいですが子犬の時は特に犬小屋を清潔にして環境に注意しておかなければなりません。
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サルモネラ菌
サルモネラ菌は健康な犬にも存在していますが、病原菌にもなります。病原菌になるきっかけは水や餌と言われています。
体力が弱まり免疫力が低下している時に発病しますので免疫力の弱い子犬や老犬は特に注意が必要です。
症状としては元気が無くなり嘔吐や熱が出て腹痛も伴います。最悪な場合、死に至ることもあります。重要な予防としては清潔な環境を保ち、犬にストレスを与えないことが予防策となります。
レプトスピラ
スピロヘータと呼ばれる細菌により引き起こされ腎臓や肝臓が侵され甚大な障害を被る可能性があります。
この菌は既に感染した犬などの生物の糞や尿から排出され、付近の水たまりや土壌に含まれ、それが愛犬の皮膚や口から侵入することで感染、発症していきます。
感染しても症状が出ない事も多いですが現れる症状としては元気が無くなり、発熱、食欲不振、嘔吐、口腔粘膜の出血、血便、黄疸、尿毒症などが挙げられ最悪な場合には命を落とすこともあります。急性の場合には3,4日程度で死亡することもあります。
この最近は便や尿から排出されたものが水たまりの中でも生き延びる為、溜まり水などを飲ませないなどの注意をする必要があります。
また最も有効な予防はワクチンを接種することで定期的に行う事が求められます。もし、感染してしまった場合には抗生物質の投与や点滴、内科療法により治療されます。
ボルデテラ菌(ケンネルコフ)
ケンネルコフ(犬の上部気道感染症)の原因菌であり人の百日咳も有名です。空咳が突然起こり、長く続くのが特徴で主に呼吸器系に病状が現れます。
咳ばかりに注目されますが鼻水も同様に出ます。細菌に感染した際には2日から2週間の潜伏期間を経て症状が現れます。
感染源としてすでに感染した犬の咳や唾液などによる飛沫感染が考えられますので集団で飼われている場合などは速やかに隔離する必要があります。同様に犬が多く集まる場所を避けるなども必要になります。
治療は咳の緩和のために鎮咳薬の吸入や投薬、体力回復のための栄養点滴、投与が行われ免疫向上を目指します。
100パーセント予防するのは不可能ですが犬小屋などの衛生管理を整えて菌が繁殖しにくい環境にし、空気が乾燥する冬は特に犬の気道粘膜が弱くなりがちなので適切な温度、湿度を保つように管理が必要です。
犬の細菌感染の急性膵炎とは
犬に元気がなく、散歩も嫌がるようになったら、何かしらの病気のサインかもしれません。急性膵炎もまた、元気の消失から症状が現れ始める病気です。
犬の急性膵炎になると、激しい腹痛を伴うため、お腹をかばうように体を丸めるようになり、散歩もしたがらなくなります。
散歩をしても、その最中に座りこみ歩くことをためらうようになります。元気がなく弱々しくなり、食欲が落ち、発熱や嘔吐が見られます。嘔吐をすることで息も浅く速くなり、症状が悪化すると呼吸困難やショック症状に陥ることもあるので早期治療が必要です。
重症化してしまうと命に関わりますので、元気がなく散歩を嫌がるようになったら念のため獣医に診察してもらうようにしましょう。便が黄色く、脂っぽくなるのも特徴です。
原因として、細菌感染の急性膵炎や、ウィルス感染が引き起こすこともあります。
また、多くの場合は脂肪分の多い偏った食事が多いことや、特定の薬物が原因で発症することが考えられますし、利尿薬や、抗けいれん剤などが、膵炎を引き起こす恐れのある薬物としてあげられます。
また、膵炎に炎症が起こると、膵臓の組織や膿瘍部分に細菌感染しやすくなるといわれています。膵臓で作られる膵液は、十二指腸で腸液と混じって活性化して、強い消火液になります。
急性膵炎は上記のようなことが原因となり、活性化した膵液が膵臓に逆流して、自分の膵臓自体を消化しようとすることで生じます。
急性膵炎の治療法としては、特効薬はありません。吐き気や痛みを和らげるために鎮痛剤や制吐剤、抗生物質などを投与する対症療法となります。
軽症の場合は、消化のいい食事を与える程度で治癒しますが、重症になると食事は3~7日ほどは一切与えずに、膵臓を休ませてあげる必要があります。
入院をして様子をみながら薬剤や輸液を投与して、栄養補給を徹底します。予防のためには、食事に偏りがないことが大切。日頃から栄養バランスに優れた食事を心がけ、適度な運動をするようにしましょう。
犬の細菌性毛包炎の原因と対策
犬がかかりうる病気のひとつに「皮膚炎」がありますが、人や猫などの動物に比べると皮膚炎にかかる確率は、犬は非常に高いといわれています。
特に気をつけたいのが、細菌が感染することによって引き起こされる「細菌性毛包炎」です。
毛包とは、毛を包み込んでいる構造物のことです。皮膚の表面である表皮と、表皮を下から支えている真皮をまたぐようにして存在しており、表皮に近い方からロート部、峡部、下部に分かれています。
毛包は、毛をつくる重要な役割を担っており、犬の場合は一つの毛包の中に1本の主毛と、数本の副毛が混在しています。
この毛包が細菌によって炎症を起こすことを、細菌性毛包炎といいます。他にも、表在性細菌性毛包炎、膿皮症などとも呼ばれています。
細菌による皮膚炎の原因はさまざまですが、90%はブドウ球菌が原因だといわれています。
この菌は皮膚の常在菌で、通常は被害を及ぼすことはありませんが、アレルギーによって皮膚のバリア機能が低下しているときや、栄養不足などによっても皮膚炎を起こすことがあります。
犬は、角質層が薄く、毛包の防御力が弱いといった特性があるため、少しでも皮膚の細菌バランスを崩すことで発症してしまうのです。
特に、皮膚に傷がついたり、汚れていたり、気温や湿度が上昇することによって起こります。
また、寄生虫、脂漏性皮膚炎、ホルモン失調、アレルギーなどの疾患によっても引き起こされることがあります。強烈なかゆみがあることが多いのですが、かゆみがない場合もあります。
皮膚には赤いブツブツや、ニキビのような膿んだブツブツが見られ、進行すると環状に広がり脱毛することも。
治療は、抗菌クリームや軟膏、抗生物質による投薬治療、基礎疾患の治療などにより行われます。
基礎疾患としては、甲状腺機能低下症や、クッシング症候群、脂漏症、ニキビダニ症などがあり、こういった疾患がある場合はまずこちらを治癒することが優先となります。
また、ダニやノミなどの寄生虫の駆除も重要。寄生虫の管理をすることで皮膚のかゆみを抑え、炎症の再発を防ぎます。
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犬の細菌感染による耳の病気とは
犬の耳に支障をきたす病気はいくつかありますが、主なものに「外耳炎」と「中耳炎」があります。外耳炎とは、耳の外の皮膚に炎症を起こしてしまう病気のことをいいます。
特に、耳が垂れている犬や耳の穴が狭い犬などは、耳の通気性が悪いため外耳炎を引き起こしやすいといわれています。
また、アレルギー体質のため皮膚の感染から外耳炎になることも考えられます。外耳炎の要因のひとつに、カビとして知られる真菌や細菌が繁殖することがあげられます。
細菌やカビはどこにでも存在するものですが、通常、皮膚には自浄作用があるため繁殖することは稀です。
しかし、何らかの要因から犬の免疫力が低下したり、耳垢がたまり易い「脂漏症」などになったり、細菌が繁殖しやすい環境が整っていたりすると、細菌感染により外耳炎になることがあります。
他には、「耳ヒゼンダニ」という寄生虫が感染することにより外耳炎が引き起こされることがあります。
耳ヒゼンダニとは通常、耳の中や外にのみ寄生しているダニのことで、子犬のときに母犬から感染することが多く、耳の中に到達してから耳垢を食べて繁殖していきます。
外耳とは関係ない外の環境にうみつけられた卵が孵化し、ダニが成長しながら外耳に到達することも珍しくありません。
外耳炎の悪化や、慢性化することにより「中耳炎」を引き起こすことがあります。何らかの原因で鼓膜が破れたりすることで中耳炎となります。
鼓膜が破れる原因のひとつとして、外耳炎の炎症がひどくなり、少しずつ炎症が鼓膜の方に及び、鼓膜が耐えきれなくなって破れることが考えられます。また、不適切な耳掃除から鼓膜を破ってしまうこともよくあります。
犬の外耳は途中で曲がっているため、耳の中に溜まった汚れをいつの間にか入口の方から押し詰めていたとしたら、鼓膜を破く可能性もあります。
症状は外耳炎とさほど変わりませんが、中耳炎は強い痛みを伴います。悪化すると今度は内耳炎へと進行し、神経症状も引き起こす恐れがあるので、早め早めの対処が重要です。
犬の細菌性の下痢~原因と治療法
犬の日頃の健康チェックとして、糞便を目安としている飼い主は多いでしょう。血が混じっていたり、寄生虫が入り込んでいたりと、便からはあらゆる病気や健康状態を確認することができます。特に下痢をしている場合は何かしらの病気を疑いましょう。
単なる消化不調の場合もありますが、胃腸で炎症が起きているケースや、胃腸に関わる疾患を起こしているケースが多いので、獣医に相談することをおすすめします。
特に、子犬が感染症にかかっている場合はすぐに症状が悪化し、2~3日の間に死に至ることもあるのであなどれません。
細菌性の下痢には、「細菌性腸炎」というものがあります。細菌性腸炎の原因となる細菌はいろいろありますが、多くは「サルモネラ」「カンピロバクター」が原因だといわれています。
これらに汚染された食べ物を口にすると、細菌が体内に入り込んで増殖し、腸の粘膜に炎症を起こします。毒素を出し腸の粘膜がダメージを負うと下痢をするようになります。
細菌性腸炎にかかると、血液や粘液の混じった下痢をするようになり、食欲が減退し、元気がなくなり、高熱を出すこともあります。
また、下痢や嘔吐を繰り返すことで脱水症状に陥ることもあり、ショック状態となり命に関わる恐れもあります。
比較的免疫力の高い成犬は症状はそれほど重くはなく、下痢をしても2~3日で治癒することもあります。
しかし、免疫力の低い子犬や老犬の場合は、下痢や高熱などあらゆる症状が重なることで衰弱してしまう可能性が高いため注意が必要です。
成犬の場合は1~2回ほど食事を抜けば大抵治癒します。子犬の場合は、食事を抜いてしまうと低血糖を起こして命の危険にさらされる可能性が高いので、食事を抜くような処置はとらずに獣医に治療してもらいましょう。
治療は、原因となる細菌を明らかにしてから抗生物質で回復をはかります。下痢が激しい場合は脱水症状に陥らないよう点滴をし、腸の粘膜を保護する薬を使うこともあります。
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